これはとめどないバイタリティがありあまる女の断末魔です

 ああ、この終わりなき、とめどなきバイタリティから逃れるすべはないものか。幼少期から、私の中には、とめどなきバイタリティが存在していた。負けてはならないしとどまってはならないのだ。往々にして「負けず嫌い」という言葉で括られがちであるが、そこからさらに数段深い階層に位置する面倒な性分である。

 バイタリティは、私をいつも突き動かす。ここにいてはならない、このままではいけない、成長しなければ、と。高校のときは、大学生になれば、そして、就職すれば、東京にいけばと願い続けた。転職できたら、給料が上がれば、彼氏ができたら、結婚…子供…来年になったら、いつも次のステージを目指し、奔走し続け、今に甘んじることができない。致しかねるのだ。最終ゴールはあの世に行けたら…かもしれない。つらい。

 「いつか」にいつまでも夢を馳せ、今をシャカリキるのも楽しいけれど、これっていつ届くんだろう?考える人である私は考え始めた。考えざるを得なくなった。油の乗った働き盛りの女は、ふと気付く瞬間があるんだ。私の追い求めている「幸せ」は世間一般の幸せと少しズレている。周りの人には、どうやらこの無限の湧き水のごときバイタリティがそこまでないと。いつか、私が「いつか」を追い越し、今が超最高パリピうぇーイ、もう何も追い求めないよ、ってなる日はくるのだろうか。そしてそれは私の求めている状態なのだろうか。

 そしてまた一つ気付く。見渡してもロールモデルがいないことに。女というホモ・サピエンスは、歳と共に一般的には鮮やかに下降線を描く。それに気付いた女ホモ・サピエンスが取り組み始めるのは現状維持。現状維持こそが向上なのです。そこで向上心をもって走り続けるのは、慣性の法則に逆らっているわけで、自然の摂理に逆らうホモ・サピエンスは絶滅に向かっているともいえるわけで、わけでわけで!絶滅危惧種となっても、まるでオスのように、鮮やかな羽模様や、高らかな雄叫びを上げ、孤軍奮闘する女ホモサピたちはその言葉のとおりに孤独を深めていく。そして、それらの女はあまり群れることがなくなる。バイタリティ女の卵が生まれようとしているときに、あかーーん!!そっちの水は、中毒性のある苦い水だぞぉぉ、と教えることもないのだ。はい、この苦い水の正体はビールです。もう無しではキビつぃわ…。

 孤独を深めていく一例として、女子会の楽しさが年々下がっていくこともあげられる。女子会においてのテーマはなにか?「恋」?「スイーツ」?ばーか、違います。女子会のテーマは常に『共感』一択なんです。わかるぅ、あるぅ!!くぅぅ~。これがいるんです。だけど、バイタリティ女子(以下、ティ女)たちが、共感できるフレーズは、滅多に登場しない。いや、まあ、さすがにティ女も、クソサイコパス女ではないから、おすすめのネイルサロンの話も、恋バナも、それなりに「わかるぅぅぅ」「あるぅぅぅ」って思うよ。でも無くても生きていけるものをあまり持ちたくないんです。そして長いんだ。長いんだよ、どんだけ引っ張るんだ。報告すべき部分を要約して次に移ろうぜ。本日のアジェンダはまだたくさんあったじゃないか。…ちゃうわ、アジェンダないわ。なかった。女子会にアジェンダなど存在しない。次々に移り変わるも、絶妙にテンポが悪い会話の数々は、ノーテーマ、結論不要、エンドはレス。なんなんだよこれ、Netflix見ながらskypeで参加しても良かったんじゃないのか?Netflix見つつお部屋掃除しながらでも会話全部キャッチアップできた自信あるわ。「わかるぅぅ」BOTになれるわ!それでも暇な日曜のお昼にお誘いが来たら、行くけどさ。ノコノコよりもノコノコと行くんだけどさ。一日中家で1人で過ごさないで良かったって思うから。やべぇ、今日コンビニ店員への「あ、袋なしでいいです。」以外の言葉を発してない…と思うよりマシだから。だから今日とて女子会で、表層的な「わかるぅぅ」を奏でるんです。

 ティ女だけど、独りで生きていく覚悟もないから、ときにはわかられたい。わかられたいときのために、「わかるぅぅ」貯金をするんです、目ん玉はビー玉だけど言うんです。「わかるぅぅ」「カワイーヨネー」。耳をすませばティ女のレクイエムが聴こえてくるだろ?

 そんなことばっかしてたから、私のロマンスがありあまっちゃってもう。類まれなるバイタリティをガソリンに、安定と逆走した私は、エキサイティングというサングラスをかけ、現実を直視しない。そして東京を、恵比寿を六本木を渋谷を新宿を飛び回る。駆け上がっていると錯覚して。ティ女にとって日本で一番優しくて試練の多い街TOKYOで、ちょっとだけ美味しいものを食べ、華やかなものを見た私は、少し贅沢をしすぎたみたいだ。これってこじらせ女のレシピですか?ティ女が流行る確率はゼロ。だっていまいちだもん。

わかるぅぅ。

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